〔この記事のまとめ〕
可能ですが、寄附してくださる方のお名前などを聞かなければなりません。ただし、①街頭や集会などで演説する場合で、かつ、②1000円以下であり、③「××政党△△支部」の名義でお金をいただく場合には、匿名で寄附をいただいて構いません。
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政治家は、自身の政治活動を伝えるために、駅であったり、様々な場所で街頭演説をすることがあります。多くの人が行き交う場所で演説することが効果的です。
そのような場所で、演説に感動した人から、「寄附をしたい」といって寄附をもらう場合があります。こちらから積極的に寄附を受け付けることも可能です。
まず、聞いている個人の方から、お金をいただく場合、政治家個人の名義で寄附をいただくことはできません。自身が管理している政治団体の名前でいただくべきです。政治家は、政治団体を管理しているはずです。「〇〇後援会」であったり、「××政党△△支部」などの名義でいただきましょう。
しかも、聞いている方が会社や労働組合の名義で寄附をしたいといっている場合には、「××政党△△支部」という名義でもらわなければなりません。自身の資金管理団体(「〇〇後援会」などと名前がついていることがあります)でいただくことはできません。
そして、さらに気をつけなければいけないことは、お金をいただく際には、名前や住所、職業を聞く必要があるということです。金額の多寡によっては、寄附者のお名前などが「政治資金収支報告書」に掲載されることがあるので、お名前、住所、職業などを聞きます。
ただ、街頭演説を行った場所で、そのようなまどろっこしいことはできないこともあるでしょう。いろんな人が通り、演説に感動した人が寄附くださる場合、その都度、お名前、住所、職業などをお聞きして、領収書を発行することは大変です。
そのような場合に備えて、政治資金規正法は、①街頭や集会などで演説する場合で、かつ、②1000円以下であり、③「××政党△△支部」の名義でお金をいただく場合には、匿名で寄附をいただいてよいとしています。
そのため、街頭演説などをしているときに、例えば、カンパ箱などをもって、お金を集める場合、カンパ箱に「××政党△△支部」などと書いておき、しかも、お金を入れていただく場合にそれが1000円以内であるときは、お名前等を聞かず、お金を集めても問題がないとされています。
街頭演説を行った場所において、寄附をしたいという方がいた場合には、取り急ぎ、名前、住所、職業などを聞いて、後に領収書を発行するという形にするか、①~③のルールでもって匿名で寄附をいただくかのどちらかになるでしょう。
なお、もしも街頭演説をしていた際に、栄養ドリンク、パン、おにぎりなど物品を寄附したいと言われた場合にはどうでしょうか。法律によれば、政治家個人は物品であれば、寄附を受けることができるとされていますので、(政治団体名義でなくて)政治家個人が受け取ることができます。
その場合でも、杓子定規に考えれば、寄附をしてくれた人の名前をお聞きしなければならないことになりますが(政治資金規正法22条の6第1項)、政治家とはいえ、社会生活上、他の人から、栄養ドリンク、パン、おにぎりを人からもらうことはあり得ます。政治資金規正法は、政治活動を行うための寄附に関するルールを規定しているものですから、政治活動を行うために必要不可欠な物品でもない以上、わざわざお名前などを聞く必要はないと考えることもできるように思います。