政治資金の迂回寄付、トンネル献金とは何ですか。

〔この記事のまとめ〕

政治資金規正法上は、本当は許されない寄付・献金なのですが、一定のルートを経由するなどして、一見すると適法に見える寄付・献金とでもいえばいいでしょうか。脱法行為(抜け道)として違法ではないかと指摘されていますが、実際には取り締まることは難しく、常態化しているといわれています。

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日本では、国会議員を選ぶ衆議院議員選挙、参議院議員選挙をはじめとして、都道府県議会選挙、市区町村の選挙など、多くの選挙が実施されています。

そして、選挙をするうえでは、お金が必要です。多くの政党が会社、労働組合、個人などから、寄付を受けています。

政治資金規正法という法律は「寄付」に関してルールを決めています。それによれば、会社や法人は、そもそも、政治家本人や政治家の後援会に寄付することはできません。できるのは政党、政治資金団体のみです。そのため、××会社が寄付するには、「A政治家を支える会」に寄付することはできません。「〇党本部」か「××党東京都第〇区支部」などが主な相手となります。

このように、政治資金規正法は寄付者(寄付をする主体)に規制を設けています。

また、会社が「××党東京都第〇区支部」に寄付できるとしても、寄付額についても上限が決まっています。

例えば、会社の資本金又は出資の金額が10億円未満の場合には、寄付の限度額は750万円となっています(年間)。会社の資本金又は出資の金額が500億円以上550億円未満であれば寄付の上限は6900万円です(年間)。

このように、政治資金規正法は、「寄付」ひとつとっても、寄付者であったり、寄付額について、規制を設けているのです。

一方で、政党や政治家がきちんと活動するにはお金がかかります。地元に事務所を構えれば、賃料がかかりますし、事務局を常駐させれば、人件費がかかります。チラシを作成する場合、デザイン費用がかかりますし、印刷費も必要です。

このようにお金が必要であることは間違いないので、だからこそ、国民に知られない形で、お金を集めたいというやましいことを考える議員が出てきても仕方ないかもしれません。

例えば、A会社が、知り合いのC議員に寄付をしたいと思ったとします。けれども、A会社が直接、議員の後援会に寄付をすることはできません。そこで、考える方法として、A会社が別の団体を立ち上げて、別の団体の名前でC議員後援会に寄付することはどうか、ということを考えるわけです。これを、いわゆる「迂回寄付」とか「トンネル献金」といったりするようです。

実際に過去に裁判で問題になった事案がありました。東京高等裁判所が、平成25年3月13日に言い渡した判決のなかに、迂回寄付のケースがあります。

この事件は、本当は、A会社→C議員の政治団体という流れで寄付をしたかったけれども、現行法ではA会社→C議員の政治団体への寄付は禁止されているため、わざわざA会社が「B政治団体」を設立して、A会社→B政治団体→C議員の政治団体に寄付させたことが問題ではないか、といわれました。

上記事件の一審は、

①A会社の幹部は、自分の会社の名前が表に出ることを回避したいということ、そして、法の政治献金規制をかいくぐるためにB政治団体を設立させたということを認めている、

②B政治団体の人事、事務所選定、執務環境の整備について、A会社の指示で決めていること、

③B政治団体は、C議員の政治団体への寄付を行った以外、B政治団体は何ら実働していないこと(総会も活動報告も行われていない)、

などから、B政治団体は実体のないものと認められました。そして、

④B政治団体が振り込んだ寄附はA会社から振込を原資としてしていると思われること、

などから、C議員の政治団体への寄付は、B政治団体ではなく、実はA会社が行ったものと認めました。この判断は、その後の東京高裁も認め、最高裁も、否定はしませんでした(最高裁の上告棄却は平成26年9月30日)。

この事案では、迂回寄付であることが認められましたが、このような判断は必ずしも頻繁にあるとはいえず、迂回寄付・トンネル献金を見抜くことは難しいと思います。

けれども、裁判で「迂回寄付」「トンネル寄付」だと認定されなくても、疑われる報道がなされるリスクはありますし、その場合には議員としての信用を低下させることにもなります。

政治家としてまともに活動する以上、そこには活動資金がかかりますが、やはり法律で決まっている上限を超えて寄付をするのは、法律のルールを捻じ曲げて、お金の力で公正な政治を変えようとしていることになるので、迂回寄付、トンネル献金をすることは許されないと考えます。

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