〔この記事のまとめ〕
不逮捕特権、免責特権に始まり、調査研究広報滞在費など、議員には様々な利益が認められています。
〔本文〕
国会議員には様々な権利(利益、特権)が与えられています。
一番思いつくのは、憲法50条に定められている「不逮捕特権」でしょうか。議員は、法律に定められている場合を除いては国会の会期中は逮捕されないと規定されています。ほかにも衆議院、参議院のなかで演説や討論をすることで、例えば、他の人の名誉を傷つけても、責任が問われない特権も認められています(免責特権といいます)。
国会議員としての活動を萎縮させることなく、自由に行わせるためにこれらの権利が存在すると説明されているところです。
他にも国会議員には、特別な権利が認められています。
たとえば、国会議員は毎月の給与として「歳費」をもらっています。ほかにボーナスである期末手当も認められています。これは、いわゆる給料にもあたるので、議員が生活するための費用として、支払われるのは当然です。
また、「調査研究広報滞在費」があります。これは昔でいう文通費というもので、毎月100万円が振り込まれるようです。国会議員が国政に関する調査研究、広報、国民との交流などの議員活動を行うために用いられるお金といわれており、現在は何に使ったのか公開することは要求されていません。
この調査研究広報滞在費は、政治的にも議論の対象になることが多く、そもそも廃止させるべきではないか、公開の対象にすべきではないかと指摘されることがあります。一方で、国会議員が十分な活動をするために、一定の金銭的保障がなければ、資金力に余裕がある人しか議員になれないため、廃止させるべきではない、といった声もあります。
また、国会議員になると、JRパスまたは航空券引換証があるようです。議員は①JRパス、②JRパス及び月3往復分の航空券引換証、③月4往復分の航空券引換証のうち、いずれかを選択することができます(②③を選択できる議員は一定の議員に限られるようです)。
JRパスはJR各社の各路線を利用することができるもので、航空券引換証は、航空券と引き換えて利用するものです。
JRパスをめぐっては、不祥事も何度か報道されています。現在議員ではないにもかかわらず、JRパスを返還せずに、引き続き使っていたケースや、(政治活動とは全く関係なく)私用でJRパスを使っていたケースなどが報道されています。
このようなご紹介をすると、必ず「こんな特権があるのはおかしい。国会議員は特権をもらいすぎだ」「廃止しろ」という声が聞かれます。ほかに「議員の数も減らすべきだ」という声もよくあります。
国会議員が何をやっているのかわからない、真面目に仕事していない、そのような議員に特権を認めるべきではないだろうというもので、気持ちは痛いほどわかります。国民が一生懸命仕事している一方で、甘い汁を吸っている議員がいたとしたら、そのような議員に特権があるのは許しがたいです。また無駄な議員は退場してほしいと私も思います。
しかし、一方で一生懸命議員活動をやろうとすれば、国民から話を聞いたり、一生懸命調べたりすれば当然にお金がかかります。国会議員が国民の声を受けて、きちんとした仕事をするには、やはりそれなりの経費がかかるものです。また議員の数を減らしても、削減の数に応じて無能な議員が減るわけではありません。
やるべきことは、議員の特権や議員の数を減らすことではなくて、働かない議員、無能な議員をクビにすることでしょう。国会の質問一つ聞いていても、まじめに働いているかいないかは、すぐにわかります。
不真面目な議員がいることによって、議員の特権を削減したり、議員の数を減らしてしまえば、真面目に働いている議員が割を食いますし、議員を目指す優秀な人も減っていってしまいます。
そう考えると、特権についてどのように使っているのかを説明させたり、公開させたりする改革は必要であっても、様々な権利、利益、特権を無くそうとする議論には警戒するべきだと思います。
国会議員には、様々な権利や利益が認められているからこそ、高い識見を持つ人が議員になるべきですし、働かない議員、無能な議員をチェックして、選挙で落選させることが重要になってくると思います。