〔この記事のまとめ〕
顧問費、講演費などは、一定の債務(事務、仕事)を提供したことの代わりとして、もらえるお金です。何らの債務(仕事)を提供していないのに、もらっているお金があるとすれば、どのような名目であれ、それは「寄附」にあたると思われます。
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政治資金収支報告書、所得報告書などをみていると、ときおり、政治家が顧問費、講演費、原稿料といった費目で、何等かの団体からお金をもらっている形跡を確認することができます。
政治家が特定の団体のために顧問となったり、多数人の前で講演することで、その対価として一定のお金を受け取ることはおかしいことではありません。
講演費であれ、顧問費であれ、それに見合う債務・事務を行っていれば、それを受け取ることは全く問題ありません。しかし、講演費や顧問費という名目で、ものすごく高額な費用をもらっている例もあり、その収入は「仕事に見合った適正な報酬なのだろうか」と思ってしまうことがあります。
もともと、政治資金規正法4条3号では、寄附について「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のもの」としています。政治家が自ら何等かの事務(仕事)を行ったことの対価としてもらう限り、それは寄附ではないということです。
しかしながら、何らの講演をしていないのに、講演費という名前で受け取っていたり、その講演の内容からして、その対価としては常識を超えて高額という場合であれば、それは「寄附」にあたる場合があります。その場合、政治資金収支報告書に寄附について記載していなければ、それは政治資金規正法違反になると思われます。
例えば、政治家が、一つの講演を行ったとして、その対価としてもらった講演費が、何らの合理的な理由がないのに、相場よりも数倍も高いといった場合には、「寄附」に当たる可能性が出てくるでしょう。
また、顧問というものは、もともと名誉職に相当するようなものではありますが、それでも、政治家がその団体の顧問に就任する以上、政治家特有の知見や知識、経験、知名度というものをその団体のために与える(使う)べきでしょう。団体の会議に出席することまでは要求されないでしょうが、それでも政治家が顧問として就任していることによってその団体にとって何等かプラスになっていない限り、「顧問費」として受け取っているお金も「寄附」に該当する可能性が出てきます。
例えば、顧問費として一定のお金を受け取っているにもかかわらず、その政治家が対外的に「顧問」としてアピールされておらず、どこにも紹介・届出がされていない、しかも、何らのアドバイスもせず、会議にも出席していない、団体幹部と全くやり取りがない、ということであれば、それは「顧問費」という名の「寄附」に当たる可能性が高いでしょう。その場合、顧問費としてもらっている場合には、不記載として、政治資金規正法違反にあたることが考えられます。
顧問費、講演費などは、一定の債務(事務、仕事)を提供したことからもらえるお金です。何らの債務を提供していないのに、もらっているお金があるとすれば、どのような名目であれ、それは「寄附」に当たると思われます。