〔この記事のまとめ〕
政治資金規正法という法律では外国籍の方からの寄付を受けることは禁止されています。寄付を受ければ、責任が発生するということになりますが、議員側からすれば防ぎようもない場合もあり、必ず責任を追及するというのは難しいところです。
〔本文〕
時々ではありますが、「議員が外国籍の方から寄付をもらったため、政治資金規正法に違反する!」とするニュースを見かけるときがあります。
確かに、政治資金規正法という法律があり、22条の5という条文があります。
その条文は、外国籍の方から寄付をもらってはいけないと規定しています。
そのため、議員が外国籍の方からお金をもらったら、この法律に違反するわけですから「責任を取るべきではないか」という声が上がることもあります。
しかし、議員側からすれば、このような事態を防止することが極めて難しいという実情があり、議員は責任を取った方がよいのかは慎重に議論したほうがよいと思います。
議員として活動する以上、お金がかかります。例えば、自身の政策を伝えるためにビラをデザインして印刷しなければなりません。事務所を構える場合には、賃料もかかります。秘書を雇ったら人件費もかかります。
議員として活動するだけで、お金は必要になるわけです。
議員のホームページをみるだけでも、後援会への入会を勧めていたり、寄付(カンパ、献金)を募っています。
寄付を行う際には、議員本人に直接お金を持っていくこともできますが、銀行振り込みであったり、クレジットカードを用いての寄付なども最近は増えています。
寄付を受ける議員は、銀行振り込みやクレジットカードを用いての寄付をしていただく前に、氏名、住所、国籍などの個人情報を打ち込むフォームを設けていることが一般的でしょう。「外国籍の方は寄付をお受けすることはできません」と書いてある場合も多くあります。
しかし、このようなフォームの入力を無視して(又はよく見なかったことによって)、外国籍の方が寄付をしてきた場合、そのことによって議員の方にお金が入金されてしまいます。
そうしたら、議員側としては、寄付をもらったことになったことになり、政治資金規正法という法律に違反することになってしまうのです。すぐに返したとしても、形式的には法律に違反してしまいます。
つまり、議員側からすれば、外国籍の方は寄付をお受けできませんと謳っていても、寄付者によっては、それを飛び越えて、寄付ができてしまうわけです。
議員側としては、しっかりと確認している以上、法的責任は問われないと思います。しかし、しっかりと確認していても、報道されるリスクはあるわけで、報道されたことによっての信用低下リスク(レピュテーションリスク)は避けられません。これは議員にとっては少々気の毒のように思います。
そもそも、外国籍の方からの寄付を禁止しているのは、いわば国の独立性を守るためにあります。確かに、外国政府の息がかかった団体や人からの多額の寄付がなされた結果、寄付をしてくれた外国のために日本政治がなされる、ということはあってはならないでしょう。上記のような趣旨は理解できるところではあります。
しかし、おかしいのは、政治資金規正法の22条の5の但し書きには、外国の資本が50%以上ある株式会社でも、その株式会社が5年以上、上場されていれば、その会社から政治家に寄付をすることは許されるというルールになっているのです。
個人の方の寄付と会社からの寄付は、寄付額としては段違いですから、もしも外国の影響を防ぐという趣旨を一貫させるのであれば、この但し書きは矛盾しています。
いずれにせよ、会社からの寄付は5年以上の上場で許されることに対し、個人の外国籍の方の場合、一律に禁止となっているため、現行の法律でも、矛盾しているように思いますし、何よりも、外国籍を持つ方の個人寄付については防ぎようもない部分もあるため、改正する必要があるように思います。