〔この記事のまとめ〕
無償で物件を借りる場合は、賃料相当額を寄付してもらっているということになるので、政治資金収支報告書に記載しなければなりません。また、個人の政治家の場合、会社や労働組合等からは無償で借りることは認められていません。
〔本文〕
政治家は、自分が持っている政治団体の毎年の収入と支出を記載した「政治資金収支報告書」を作成し、行政に提出しなければなりません。そこにウソ(虚偽)を書いたり、本来記載しなければいけないことをあえて書かなかったり(不記載)することは許されません。
政治家が寄付を頂いたら、寄付者の名前、住所、職業を聞かなければなりません。金額や日付も記録する必要があります。
では、もしも、知り合いの人から、「私が持っているビルの一室が長いこと空室になっているのだけれど、それでよければ無料で貸してあげますよ」といわれたらどうでしょうか。
無償で貸していただけるということは大変ありがたいお申し出です。
ただ無償で借りる場合でも、政治資金収支報告書にきちんと記載しなればならず、そのことをうっかり見落としている方は多いです。
政治資金規正法4条3項は、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のもの」を「寄附」としています。いわゆる現金だけを指しているわけではありません。
無償でビルの一室を借りるには本来的に賃料が発生するはずです。その賃料がいらないということですから、要するに、その知り合いの人が政治家に対して、(本当は賃料分を支払ってもらえるのに)それはいらないといっているということなので、政治家にとっては利益になっています。
そのため、一種の寄付を受けているということになるので、賃料として通常払わなければいけない金額を計算して、その金額と計算根拠を政治資金収支報告書に記載しなければならないのです(しかも、これは現金による寄付ではないため、支出にも同額を計上して、現金の額を一致させる必要があります)。
ですから、無償でビルを借りる場合であっても、政治資金収支報告書には、想定される賃料分を寄付として記載しなければならず、それを記載しなければ「不記載」ということになります。
また、個人の政治家は、会社や労働組合等から寄付を受けてはいけないと政治資金規正法21条1項で決まっています。そのため、もしも、とある会社から「うちの会社がビルを持っている。そのビルの一室が空室だ。もしよければ無償で貸してあげるよ」といわれた場合でも、それは断らなければなりません。
過去にも同様のことがニュースになっていますから、気を付けたいところです。