企業から寄附を受ける場合に留意すべきことがありますか。

 寄付について

〔この記事のまとめ〕

例えば、政治家個人の名前では寄附をいただくことはできません。〇〇政党××支部などでいただくべきです。またその際にも寄附額の上限額があるので、注意が必要です。

〔本文〕

日本の法律では、「企業献金」、いわゆる企業が政治活動に関する寄付を行うことが認められています。

企業献金は往々にして、金額が高くなるといわれているので、そもそもそのような高額な企業献金については法律で禁止すべきではないか、という意見もあるところです。しかし、現在の政治資金規正法においては、政党・政党支部(政治資金団体も含まれますがここではその説明は省きます)に対する献金である限り、適法と考えられています。

では、政治家等が、企業から献金を受け取る際に留意すべき点はどのようなことがあるでしょうか。

上でも説明したとおり、政治家側は、政治家個人の名前で寄附を受け取ることはできません。また、資金管理団体などの政治団体(例えば、〇〇後援会などとされていることが多いものです)の名前で受け取ることもできません(政治資金規正法21条1項)。そして、それは、企業だけでなく、労働組合などの団体も同じです。企業や労働組合などの団体は、あくまで特定の政党、政党支部、政治資金団体に献金することができるのみです。

ですので、政治家等は、もし企業献金の申し出をいただいた場合、「〇政党本部」又は「〇政党×支部」の名前で領収書を発行して、寄附を受け取ることになります。

なお、会社、労働組合その他の団体が後援会に入会して、会費や党費を支払ってもらうのも寄附とみなされるため(規制法5条2号)、後援会に入ることも禁止されています。もし企業から後援会に入りたいといわれたとしても、それはお断りするのが安全な対応です。

そして、「〇政党×支部」という名前で、献金をいただく場合でも、献金する企業側には寄附額の上限が定まっています。企業献金を行おうとする企業は、どの相手に寄付をしようが、年間で、資本金等に応じて750万円~1億円の上限が決まっており(純粋規制)、これを超す献金は許されません。

資本金によってその上限額は様々です。本記事に添付している表は、その制限の一覧表です(総務省自治行政局選挙部政治資金課『政治資金規正法のあらまし』18頁 別表2)。

ほかにも、政治資金規正法はさらにルールを決めており、以下の企業は寄附そのものが禁止されています(寄附の質的制限)。

国から、補助金、負担金のような公的な資金が入っている企業は、交付決定の通知を受けた日から1年を経過するまでの間、政治活動に関する寄附をすることはできません。また、国から、資本金などに全部または一部の出資又は拠出を受けている会社その他の法人は、政治活動に関する寄附をすることはできません。地方公共団体からの給付金交付や資本金への出資等に関しても同様で、その場合の企業は、当該地方公共団体の議会議員や首長などの公職の候補者を推薦したりする政治団体に対して寄付することはできません。

このように国や地方公共団体から補助金等を受けている企業は、国や地方公共団体と特別な関係に立っていると言えるため、寄附を許してしまうと、このような特別な関係を維持しようと(つまり引きつづき補助金をもらえるよう)画策する可能性があるため、政治活動に関する寄附をすることはできないと考えられているのです。したがって、国や地方公共団体から補助金等を受けている企業は政治活動に関する寄附が禁止されています。

また、3事業年度にわたり継続して欠損を生じている企業は、欠損が埋められるまでの間は政党又は政治資金団体に対する寄附はできません。

これは、そもそも会社が赤字であって、株主に配当もできない経済状態である以上、政治献金を許容するのは適当ではないため、政治献金が禁止されています。

ほかにも、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織から政治活動に関する寄附を受けることはできません(ただし一定の例外があり、寄附が認められる場合もあります)。一定の外国資本の入った企業から献金を受けることは、日本の政治や選挙が外国の勢力によって影響を受ける恐れがあります。そのため、寄附が禁止されています。

以上のように、主だった規制を述べましたが、企業献金をした場合には、寄附額が年間5万円を超える場合、当該企業の名称、主たる本店(事務所)の所在地、代表者の氏名、年月日などが(寄附を受け取った政治団体の)政治資金収支報告書に記載されることになります。

また、いうまでもありませんが、寄附者は実在していることが必要です。寄附者は自分のお金で寄附することが必要であり、別の寄付者から預かっているお金で寄付したり、他の企業の名前をかたって寄附することは許されません(政治資金規正法22条の6第1項)。

もっとも、政治家等からすれば、企業の資本金や資本状況については正確にはわからないですから、リスクヘッジのために、寄附をもらう場合には、「〇〇の場合には寄附をいただくことはできません」として、注意喚起するような書類や申し込みフォームのようなものを用意しておくことは考えられるでしょう。

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