経費の架空計上とは何ですか?

〔この記事のまとめ〕

 架空計上とは、政治団体が本当は支出してもいない経費を支出したとして、記載していることです。これは政治資金規正法の虚偽記入にあたります。場合によっては私文書偽造罪などに当たる場合もあるかもしれません。

日ごろから、議員自身が、どのような経費を支出しているかなど、大まかにでも把握しておく必要があるといえるでしょう。

〔本文〕

政治家は政治活動を行うために、政治団体を持っているところ、政治団体は、1年の収入と支出を記載した「政治資金収支報告書」を行政に提出しなければなりません。そして、政治資金収支報告書は公開されます。

当然ですが、政治資金収支報告書に記載する「支出」は、実際に支出されたものでなければなりません。

そのため、支出されてもいない経費なのに、それがさも支出されたとして政治資金収支報告書に記載した場合には、虚偽記入として刑事罰の対象となります(政治資金規正法25条1項3号)。大きく報道されることにもなりますし、レピュテーションリスクも含めて、控えるべきです。

過去には、架空の経費を計上したことで問題になった事例が複数あります。

例えば、国会議員が代表者となっている政治団体が230万円相当のガソリン代を政治資金収支報告書に計上したことがありました。政治資金収支報告書にはそれに沿う領収書が添付されていました。実際にはそのようなガソリン代の支出はなかったにもかかわらず、です。

ほかにも、とある政党の大阪府内の政党支部が作成した2009年の政治資金収支報告書には、実態がないと思われる約362万円の支出が計上されていました。政治資金収支報告書には、愛知県の税理士事務所とその関連事務所から、2009年1月~12月に毎月1~3台の車を借りるリース契約の領収書などが添付されていたとされています。

支出してもいない経費が計上されていたということは許されることではありません。

しかも、国会議員が代表などを務める後援会等(資金管理団体)、政党支部などは登録政治資金監査人による監査を受けなければなりません。

監査は、一定の資格をもった登録政治資金監査人が、国会議員が代表者となる政治団体等の支出をチェックします。この監査は、支出の使途そのものの妥当性をチェックするものではなく、あくまで政治資金収支報告書の記載が領収書などと整合しているかを確認する業務にすぎません。

上記の例は、いずれも登録政治資金監査人の監査で明らかになったのではなく、政治資金収支報告書が公開されてから明らかになったということですから、架空の経費が政治資金収支報告書に支出として記載され、一見、それに沿う領収書があったということになります。

つまり、領収書を偽造している可能性が高いことになります。上記のガソリン代の架空計上の事例では、捨てられた他人のレシートを拾って用いたとのことですが、もう一つの事例では、領収書そのものを偽造していたとなっています。

支出してもいない経費を支出しているという意味で、政治資金規正法違反ですし、もしも領収書を偽造しているとしたら、それは私文書偽造罪(刑法159条)にもあたりかねない行為です。悪質性は極めて大きいです。 議員当人からしたら、架空経費を計上することは絶対にあってはならないですし、スタッフがそのようなことを行わないようにも適切に管理監督しておく必要があります。日ごろから、スタッフに任せきりにしないで、どのような経費を支出しているか、支出額はどの程度か、常識を超えて高すぎないかを大まかにでも把握しておく必要があるといえるでしょう。

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